こんばんは、めぐさんです。
2007年の発売20周年記念モデルが発表された後、国内販売終了したTW200/225ですが、北米ではいまだにTW200の新車が販売されていることをご存知でしょうか。
今回はこの海外仕様のTW200について記事にしてみました。
毎年生産終了が噂されているTW200ですが、今年は久々のマイナーチェンジが施されました。
外見はこんな感じ
前年度からの大きな変更は外見のみ。
2017年モデルから3年近く販売されていた通称"日焼けカラー"(正式にはサンドベージュ)から引き締まったブラックタンク&国内96年モデルを彷彿とさせるグレーカウルになり、アメリカのTWコミュニティでは現行モデルのオーナーからなんで早く売らなかったんだ、2020モデル買っちゃったよなどと阿鼻叫喚のコメントが報告されています。
オフロードコンセプトが色濃い北米TW
日本仕様は2000年のTW200E(5LB)型発売時からストリートを重視したオンロードネイキッドモデルとして販売されていましたが、国外モデル(特に北米仕様販売国圏内)は1987年の初代発売時から一貫してTWをオフロードメインとした販売展開で築いており、北米ヤマハ公式サイト内の紹介文でも
- Terrain-Conquering Tires
Big fat tires deliver great traction and rider comfort over a wide range of terrain, and they make the TW200 the most distinctive-looking, dual-purpose machine around.
(訳:地形を征服するタイヤ
ビッグファットタイヤは、幅広い地形で優れたトラクションとライダーの快適性を提供し、TW200を最も特徴的な外観のデュアルパーパスマシンにします。) - Low Seat Height
A low seat and compact chassis help inspire confidence in anyone who rides the TW200, making it one of the most user friendly on- and off-road bikes on the market.
(訳:低いシート高さ
低いシートとコンパクトなシャーシは、TW200に乗る人に自信を与え、市場で最もユーザーフレンドリーなオンロードおよびオフロードバイクの1つにしています。) - Electric Start
The electric start and full-street equipment make the TW200 super convenient to ride just about anywhere you need to go.
(訳:電動スタート
電動スタートとフルストリートの装備により、TW200はどこにでも移動するのに非常に便利です。)
〜下線部yamahamotorsports.com内TW200紹介ページより引用〜
…このように、常にユーザーフレンドリーでどんな地形であっても快適に、確実に走破することができることを強く推しています。
これは日本で流行っている大柄で迫力のある大排気量アドベンチャーやスピードを求めたエンデューロレーサー、相手を威嚇するデザインのスポーツバイクとは相反するもので、私がTWを好きになった理由の一つでもあります。
車体価格も50万円と北米ヤマハの公道仕様のオフロードバイクの中では最も安く、ユーザー層もオフロード初心者から大陸間移動のアドベンチャー仕様までかなり幅広いです。
北米仕様と日本仕様の違い
TWシリーズは様々な仕様が存在しますが今回は北米現行モデルに採用されている特徴的な部品を取り上げていきます。
カウル
国内シリーズでは98年モデルから追加されたTW200Eで丸目化、TW225ではテールカウルのショート化が図られましたが、現行の北米仕様では87年モデルから一貫してオフロードスタイルの外装が採用されています。
灯火類
画像は2008年モデル
国内の初期モデルによく似たヘッドライトですが中身はH4バルブ仕様のものになっており、北米の右側通行に合わせてカットラインが変更されています。
ウインカーは北米の法規に合わせて大きなものを装着、フロントはW球採用によりウインカーポジション化されておりフロントフォークにリフレクターも追加されています。
タンク
2020年モデルまで採用されていたいわゆる"日焼けカウル"がコレです、なんとなく00年のカウルっぽい感じ
見えにくいですが、200cc時代の外装を維持している中で唯一タンクのみTW225やセローと同じキャップを採用しているものに進化しています。
また、カリフォルニアモデルのみ(現行モデルは全てカリフォルニアモデルに統合)、後述するチャコールキャニスタ用の配管を取り付けるためタンクに穴あけ加工が施されています。
マフラー
画像は2020年モデル
国内仕様のマフラーをベースにテール部分にパイプが追加されたようなデザインの北米仕様純正マフラー。
なぜこのような仕様なのかは不明ですが内部を分解した写真を見ても特に大きな細工がされているようではなかったので、単純にマフラーなどに排気ガスがかからないようにこの仕様になっているのかなという予想です。
ちなみにエキパイ側の取り付けボルトが日本仕様と違う位置にあるようで、日本仕様のTW200、225共に互換性はない模様です。
キャニスター
画像は2020年モデル
聞きなれない名前で「何の部品?」となる方も多いかもしれませんが、ガソリンタンクや吸気パイプ内から揮発、蒸発した未燃焼ガスが大気中に放出されてしまうことを防止するために取り付けられている部品です。
逆流防止弁がついたパイプと内部に揮発ガスを吸収する素材が入ったタンクで構成されており、未燃焼ガスを吸着素材で吸収、そこに外気を通し混合気にさせてもう一度吸気に戻してやる構造になっています。
北米仕様のTWは87年の発売から現在まで必ず2種類のモデルが販売されており、この2モデルの違いがこのキャニスターの有無です。
このキャニスターがついたモデルが通称"カリフォルニア仕様"と呼ばれるもので、カリフォルニア州のみ独自の厳しい排ガス規制を採用していることに起因しています。
カリフォルニア州では州独自の規制としてキャブレター仕様の全ての日本産バイクにキャニスター取り付けを義務付けました。
これにより連邦規制仕様(49state)とカリフォルニア仕様(CA)の2モデルが現在まで継続して展開されていましたが、2017年にアメリカの排出ガス規制を管理しているEPAにより連邦全体の排出ガス規制値がカリフォルニアの2016年当時の規制値まで引き上げられ、結果として全米で新車販売されるTW200が全てキャニスター装着車になりました。
現状音量規制や燃費の規制などまだまだカリフォルニア独自の規制が残っているので、2021モデルも継続して連邦規制仕様とカリフォルニア仕様の2モデルが展開される模様です。
キックレスエンジン
画像は2020年モデル
北米仕様のTWには何故かキックが付いていません。
2003年型から無くなったようで、メーカーで不要と判断され取り外されたのだとは思いますが北米ユーザー間でも必要だという声があり実際にコンバージョンキットが販売されています。
マイルメーター
アメリカではマイル表記が基本なのでマイルメーターを標準装備。
内側に小さくキロ表記を併記しています。
日本でも売ってくれたらいいのに
今ではすっかり"オフロードも走れるオンロードバイク"のポジションになってしまったTWですが、海外仕様では気軽に林道に連れて行ってくれるオフロードバイクとして不動のポジションを築き上げており、無骨さと柔軟さを兼ね備えたスタイルは今の極端すぎる日本市場に一石を投じられるバイクだと思います。
しかしながら、未だにキャブレターを装備し国内の各種規制をクリアできないこと、何よりも今の日本国内のユーザー、ひいてはメーカーや国内販売店自体ががこのようなバイクに興味を示さないことにより、国内販売は正規輸入や並行輸入は絶望的な状態です。
2025年以降アメリカの排ガス規制がさらに強化されTWの販売継続は絶望的な状態になっており、もう10年以上進化をやめてカラーリング変更のみに止まっている現状、新車を手に入れる最後のチャンスになるのでしょうか?