ハンドルスイッチボックスのデザイン
バイクに乗ると必ず一度は触る部品。
ハンドルスイッチです。
モトクロッサーからハーレーまでどんなバイクでもほぼ必ずといっていいほど装着されているパーツ。
しかしながらバイクカスタムの中では結構カスタムの優先順位が低い方なのではと思います。
特に旧車、タンクやカウル、フォークがピカピカに磨かれているのにハンドルスイッチやプラスチック部品がくすんでいたり色褪せて白っぽくなっていたり…
最近のバイクではここに様々な電子部品が付いてますが、電子制御を使っていない大半の車種はシンプルな構成で構造も比較的単純なのでイメージチェンジにぴったりなのではないでしょうか?
今回は拡張性があったりデザインが洒落たスイッチをいくつかピックアップしてみました。
- ハンドルスイッチボックスのデザイン
- 作業前に知っておきたいこと
- 純正流用をするか社外品を買うか
- 品質重視の純正ハンドルスイッチボックス
- 汎用スイッチキットを流用することもできる
- 汎用スイッチ自体もカスタムできるぞ
- まとめ
作業前に知っておきたいこと
自分のバイクのスイッチの構成を知る
左右のスイッチに何が割り振られているかによって選択できる部品は限られてきます。
最近のバイクだとMODEスイッチがついていたり、通常左についているスイッチが右についていたりなんてこともあります。
シンプルな構成であるほど拡張性が大きいということですね。
まず自分のバイクのハンドルスイッチがどのような構成になっているか確認してみましょう。
左スイッチ
ヤマハのバイクの中では一番シンプルでよくあるタイプ。
①・・・ヘッドライトハイロー切り替え
②・・・ウインカー
③・・・ホーン
右スイッチ
こちらも同じく一番シンプルで標準なタイプ。
また、スロットルホルダーと別体になっています。
④・・・キルスイッチ
⑤・・・セルスイッチ
カプラー(コネクタ)の互換性は全て作り変えるくらいの考えで
どの車種もメインハーネスとの接続には大体カプラーが使われていますが、メーカーや年式によってタイプはバラバラ。
また、一見同じカプラーに見えてもオスメスや内部の配列が違うことが多いのでポン付けの互換性はほぼ無いと思った方がいいと思います。
カプラー自体はメーカー内製や特殊なものを使っていない限り電装メーカーの規格品を使っていることが多いので、入手難易度はそこまで高くはないです。
売却時に純正に戻すことを考えたり、配線の修理をするときの整備性を考えると車体側は手を加えず、購入したスイッチ側のカプラーを車体側の既存のカプラーに合わせるのが無難でしょう。
ちなみによくギボシを使って配線してる人が多い(私もリレー周りはよくギボシを使っています)ですが、抜き差しや配線の組み替えの頻度が多いものでない限りカプラーを使った方が確実に楽です。
かさばる被覆チューブや大きな端子がついてないので見た目もスマートできれいに仕上がりますし(デメリットは断線した際に特定するのが少し面倒なくらいか)、いかにも自作しましたという感じにならないのも高ポイントだと思います。
どうしても自分のカプラーがどれを使ってるかわからない場合は純正配線を切って市販の多極の規格型カプラーを使って配線を作り直すと入手難易度的にも後々の修理や劣化時の交換が楽になります。
作業に必要なもの
車両の配線図
これがないとどれがどの配線かわかりません。
大体サービスマニュアルにの後ろの方のページに載っていることが多いですが、人気車種だとネットで探せば出てくることが多いです。
ただし、車両によって電装関係が違うことがある(発電方法の変更やヘッドライトの常時点灯義務化など、逆輸入車だとウイポジなどが付いている場合もある)ので注意が必要です。
また、スイッチボックスを他車種から流用する場合、流用元のバイクと取り付けるバイクで配線の色がバラバラなことが多いので先に調べておく必要があります。
交換するカプラー
こちらは手持ちの住友電装系OEMの110型カプラーの2極タイプでホームセンターなどで普通に売っています。
住友電装系カプラーはヤマハのバイクでは採用率が高いようで、このカプラーに対応する製品の多いエーモンカプラーはホームセンターなどでも売っており入手難易度は低いです。
電工ペンチ
私はエーモンの端子セットと一緒に売られているものを使用中。
ホームセンターでギボシ端子とセットで売っている安いものからプロ用の高級ペンチまで沢山の種類が売られていますが高頻度で配線作業をするのでなければそこまで高いものを買う必要はないと思います。
ただ、慣れてない人はメーカー品を買った方が失敗も少なくそこまで高いものでもないのでメーカー品を買うのをオススメします(自分もメーカー品が欲しい)。
注意しておきたいのが、安物の中には細い配線(0.50sq以下など)用端子の圧着に対応していないものがあるので、カプラ購入時にチェックしておくと良いです。
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予備の端子
カプラーセットを買った時は基本的に予備の端子は付属していないことが多いので失敗した時の保険用に購入しておくと後々楽です。
似た形状の大きさ違いの端子があるので購入時は注意。
サーキットテスター
電気の通電確認をする工具で、ホームセンターや大きい電気屋に行けばほぼ必ず売っています。
各種リレーの動作確認や配線導通のチェックなどに使うもので、TWの持病であるレギュレーターやジェネレーター関係のチェックなどはもちろん、中古で車種不明のスイッチ類を買った場合などに抵抗レンジを使用し配線の繋がりがどのように作用するかを確認することもできます。
私が使っているのはこちら。アナログでとても見やすいですが、車やバイクだと使用レンジはDC30Vに!
純正流用をするか社外品を買うか
先に結論を言っておくと、デザイン的なものに関しては正直そこまで変わりません。
何故なら、拡張性に優れたタイプの社外品の多くが純正品のOEM品であるからです。
例えば、ハイスロキットを取り付ける為に使用されることの多い薄型ハンドルスイッチは後に紹介するOWやZXスイッチと呼ばれるタイプを使用することが多いのですが、
OWスイッチの元になった車種はヤマハのOW01=FZR750、
ZXスイッチはZX=カワサキのZXシリーズが元ネタです。
また、複数のバイクメーカーが同じデザインのスイッチをコネクタと配線色を変えて新車に装着したりすることがあります。
特にDG07J以降のTWの右スイッチに採用されているタイプ(4枚目画像)のものはヤマハ内でもかなりの車種で採用されている他、カワサキのZX-14Rなどにも採用されていたり、逆にZXタイプのヘッドライトスイッチ付きのモデル(2枚目画像)はFZS600やYZFの国外仕様に採用されていたりするのが有名でしょうか。
品番が違っても蓋を開けてみると配線色とカプラーが違うだけ…でも品番によって価格が数千円単位で違う…さらに調べてみたら同じデザインの社外品がさらに安く売っていた…なんていうこともあるのである程度調べておくと同等品を新品で安く買えるなんていうこともあります。
じゃあ社外品と純正品の大きな違いは?となるとやはり細部の仕上げや耐久性でしょうか。
基本的にボディ(直接ハンドルに固定する部分)はどこも品質は同じなようですが、色プラのスイッチ部分や内部の端子は弱いものがあるようで、
安いからと社外品を買ったは良いものの青空駐車をしたら数ヶ月で内部がダメになったとかキルスイッチ触ったらそのままプラスチックが崩壊した…なんていうことも無いわけではないみたいです。
価格の社外品をとるか、品質の純正品をとるか…一度交換するとその後カスタムをすることはほとんどないのでよく考えるといいですね。
品質重視の純正ハンドルスイッチボックス
左側
一般的(一部旧車やスクーターに例外あり)な左側のハンドルスイッチボックスに取り付けられている部品は、
・ヘッドライト(ハイ/ロー切り替え)
・パッシング
・ウインカー
・ホーン
・ハザード
の5つ。
各社フラッグシップモデルにはパッシングやハザードスイッチが装着されていることが多いのですが、実はハザードスイッチに関してはこの機能がついたハンドルスイッチに交換することで車体側はほぼ無加工で取り付けることができたりします(車種によってはリレーをハザード対応品に交換したり配線の引き直しがする必要があることもあります)。
パッシングも途中の配線を加工することで非搭載のバイクにも取り付けることができるようです(やり方は結構差があるようなので購入したいスイッチによって調べてね)。
YAMAHA 4C8/5VY/5EA-83969-00
KAWASAKI 46091-0118
PMC ZXタイプ ハンドルスイッチ左(社外品)
構成部品:
・ハイ/ロー切り替え
・パッシング
・ウインカー
・ハザード
・ホーン
主な採用車種:ヤマハ・YZF-R1(5VY/4C8)/XJR1300(5UX)
カワサキZRX1200DAEG
*画像は5EA-83969-00
ハンドルスイッチの中でも多機能なタイプ。
つい最近のモデルまでついていたので入手難易度は低めで、タイミングが良いと中古市場にも状態のいい物が安く転がっています。
派生モデルの5EA-83969-00は同じデザインでハザードスイッチの脇にチョークレバーがついています(採用車種:ヤマハ・XJR1300)
YAMAHA 13S/2C0-83969-00
構成部品:
・ハイ/ロー切り替え
・パッシング
・ウインカー
・ハザード
・ホーン
主な採用車種:ヤマハ YZF-R6(13S/2C0)
*画像は2C0-83969-00
こちらも多機能タイプ。
上のモデルとのデザイン違いで入手難易度は若干低め。
全体的に丸っこいデザインですね。
YAMAHA 1JR/1JN-83972-00
構成部品:
・ハイ/ロー切り替え
・パッシング
・ウインカー
・ホーン
主な採用車種:ヤマハ SR400/500
余計な色を使わずブラックで統一されているのでクラシックなカフェスタイルやストリートネイキッドでモノトーンに仕上げたいときに似合うと思います。
ちなみにRZ250の左スイッチは同じデザインでウインカーがスライドタイプです。
右側
一般的(一部旧車やスクーターに例外あり)な右側のハンドルスイッチボックスに取り付けられている部品は、
セルスイッチ
ヘッドライトスイッチ
ハザードスイッチ
の4つ。
一部車種にはウインカーがついていますね。
ハザードスイッチとヘッドライトスイッチはどちらかを選ぶことになります。
また、ハザードスイッチは配線のレイアウトにより純正で右側にハザードスイッチがついている車種に取り付けた方が良いかと思います。
ヘッドライトスイッチは日本国内では法令の関係で(平成10年4月以降生産車)常時点灯が義務付けられていますが、旧型モデルや海外仕様の中にはヘッドライトを消せる仕様が存在しています。
YAMAHA 5DM-83963-00
KAWASAKI 46091-1786
PMC ZXタイプ スイッチ右(社外品)
構成部品:
・セル始動ボタン
・ヘッドライトON/ポジション/OFF切り替え
主な採用車種:ヤマハ YZF-R1(海外仕様)/FZS600フェーザー
カワサキZX-9R/6R(海外仕様)
*画像は5DM-83963-00
ヘッドライトスイッチが付いた薄型モデル。
スイッチ内には2系統の出力があり右からOFF - AのみON - AとB両方ONという配列になっています。
このスイッチの配線を解析することでフォグランプや各種リレーの制御スイッチとしても使うことができ、社外のかっこ悪いスライドスイッチよりも確実にスマートに使うことができます(私はフォグランプの配線として使用、ワイズギアから出てるセロー用のフォグランプキットのスイッチのような後付け感が嫌いだったので)。
YAMAHA 4L0-83975-00/2M1-83963-40-98
・ヘッドライトON/ポジション/OFF切り替え
主な採用車種:RZ250(4L3)/XS650(2M1:メーカー製造終了)
画像はミズノモーター社から販売されているRZ250向けのリビルト済みのキットです。
70〜80年代のヤマハの右ハンドルスイッチで一般的に採用されていたデザインのモデルです。
こちらもヘッドライトスイッチ内には2系統の出力があり右からOFF - AのみON - AとB両方ONという配列になっています。
SR400も似たようなデザインですがあちらはヘッドライトスイッチの部分がハザードスイッチの機能になっております(1993年の常時点灯化モデル以降)。
また、XS650の一部のモデルには(国内モデルはRZと同じタイプなので海外仕様か?)ヘッドライトスイッチ機能が無いものが、RD400(250、350についているとの情報もあり)の一部のモデルにはヘッドライトスイッチ部分が単純にON-OFFになっているモデルが同じデザインである模様です。
旧車スタイルのカスタムにちょうど良いのではないでしょうか。
チョークレバーの移植
キャブ車のオートバイなどでチョークレバーがハンドルについている車両もありますが、実はこのチョークもある程度は規格化されているのでやろうと思えば新しいスイッチに移植することも出来ます。
また、チョークレバーが車体側にある車両でハンドル周りにチョークがあれば操作が楽なのに…という方もいるかもしれません。
この場合もいくつか条件はあるもののチョークレバー一体のハンドルスイッチとキャブレター側にチョークワイヤーのアダプターを取り付けることで解決することができます。
汎用スイッチキットを流用することもできる
国内ではあまり流通はしていませんが海外製品の中では汎用スイッチキットとして、一般的なON-OFF配線のスイッチを複数並べてハンドルバー用に取り付けるようなキットがあります。
明確にここに使えという派手なマークや色分けがないのでハンドル周りの色を徹底的に減らしたり少ないパーツを効果的に目立たせたいユーザーなどにちょうど良いのではないでしょうか。
motogadget m-Switch
電装関係全般を扱っているドイツのmotogadget(モトガジェット)社から販売されているスイッチ。
押している間のみONになるプッシュタイプのスイッチで、
スイッチ、ボックス本体をブラック、ポリッシュの中から組み合わせることができます。
2ボタンタイプと3ボタンタイプがラインナップされており、このシリーズは別売りのM-unitと組み合わせることで電装システムを統括管理することができることが特徴(このユニット、軽く調べてみたら使い方次第でめっちゃヤバそうなシステムでした…絶対便利…)です。
シンプルを極めたデザインと単品販売もしている防滴仕様のスイッチは車種年代を選ばない汎用性の高さを感じます。
ちなみに、同社から販売されているプッシュボタン専用ウインカーリレー(m-Relay+)を使用することできちんとウインカースイッチとしても機能するそうです(操作的にはBMWの一部などウインカースイッチが左右分割になっているタイプと同じ感じになるのかな)。
HiGHSiDER CNC button switch
こちらも電装関係全般を扱っているドイツのHiGHSiDER(ハイサイダー)社から販売されているスイッチ。
押している間のみONになるプッシュタイプのスイッチで、ブラックのみのラインナップの模様。
細身のデザインは車種を選びません。
内部の配線が若干独特な配列の模様で使える箇所は若干限られますが(詳しくは調べてね)、電気関係ある程度自分で触ったことのある方は少し加工すれば問題ないはず。
汎用スイッチ自体もカスタムできるぞ
だいたいこの手のスイッチは規格品のスイッチ本体とカスタムメイドのボックス部分に分けられているので、ボックス部分だけ流用して好みのデザインのスイッチを組み合わせることもできます。
規格品の組み合わせならではのやり方で、想像しているよりも難しい作業ではないです(若干寸法出しが面倒ですが定規とかがあれば意外となんとかなる、スイッチはほとんどの製品が寸法表が出ていますし)。
こちらは市販の集中スイッチ(ハンドルスイッチボックスの右側にあるのが本体)を自分好みのスイッチになるように改造した例。
元々非防水ですぐに壊れそうなクオリティだった集中スイッチのボタン部分を市販の防水スイッチに交換し、各スイッチにオリジナルの振り分けをしたもので、グリップから手を離すことなく確実に操作ができる上、後付け感の少ないスマートな仕上がりになっています。
スキルがあればこんな感じに好みのデザインのスイッチを自分の使いやすいようにカスタムすることもできるのです。
まとめ
電装品関係のカスタムはDIYの中でも苦手にしている人が多く、カスタムの中でもかなり後回しになりやすいのが現状です。
しかし、この手のスイッチはバイクに乗れば毎度必ず一度は触るもの。
そして運転中はライダーの視界に入るわけで、バイクの部品の中でも数少ない常に目にする部品だと思うんです。
いくら外装部品をカスタムしても走行中は自分の目に入ることはあまりないわけで、この手のスイッチをカスタムすることは、価格のわりに満足度はかなり高いと思います。
また、バイクの配線図をみてどこの色の配線がどの部品に繋がっているかを確かめたり、どの経路で電気が流れているかの確認や勉強にもなるので、スキルアップにももってこいなのではないかなと思います。
綺麗に作り込まれたバイクでもスイッチの赤色が色褪せていたり、コンセプトに合わないスイッチがついているだけでも雰囲気が合わなくなる(特に赤は差し色にもなりますし)ので、カスタムスキルがある人はこういう細かいところも手が入ってるとちゃんと気にかけて触ってるんだなと思う方も多いはず。
最近は純正のリビルト品や新品の再販が一部車種で行われているので古いバイクでスイッチのデザインを変更しなくても色褪せのない新しいものに交換するだけでもかなり古臭さやボロさがなくなるというのも高ポイント。
配線色が違っても内部構造が同じならカプラを作り直せば取り付けもできますし、当然新品なので各スイッチの端子の消耗からくるトラブルも防げます。
どんな国のどんなバイクにもほぼ必ずついている部品であり、純正部品も(新品中古共に)多数スペアで出回っているスイッチボックスに一度目をつけてみて周りのバイクと差別化をはたしてみてはいかがでしょうか?